くらやみ1

どこにも行けないわけじゃない。足はあるし、意識は清明。本当は、どこにも行けないわけじゃない。わかっているけど、どうにもならないときがある。

(わたしは,生きているの?死んでいるの?)

葉子は,自分自身に問いかける。知り合いもない,独りきりの不毛な毎日に,妙に心の底がざわめいている。ざわざわとした不快感も,気づけばもう葉子の一部となってしまった。何の展望もなく,仕事も辞め,貯金を崩す,ひっそりとした生活の中,日に日に誰かと関わる気力もなくなっていく。それは,ゆっくりと体内を回っていく緩慢な毒のようで,これは死んでいるのとどう違うのだろうと思う。生きているのは、苦痛だ。それも、とびきり緩慢な。つらつらとそんなことばかり考える。考えても、何の進展もない。わかっているのに、そこから抜け出せない。この世は、怖いことばかりだ。こんなことでは、自分のような存在は、いつか社会的に殺されるのでは、と暗い気持ちにさえなる。隣の部屋のあの人も、道行くこの人も、いくら疑っても足りない。